2021年3月、自然公園法改正案が閣議決定されました。
国立公園や国定公園の一部地域で、クマやサルなど野生動物への餌付けが禁止となり、指示に従わない場合は30万円以下の罰金が科せられるようになります。
人が野生動物に餌をやることで、人慣れした動物が住宅地に現れたり人に危害を加えたりすることや、生態系に悪影響を及ぼす可能性が問題になっているためです。
最近決まったのは国立公園や国定公園の規制のみですが、野生動物との共生のことを考えるとすべての場所で餌づけはしないべきです。
「あれ?でも、野鳥に餌をやっている人もいるけどあれはどうなの?」
「庭に置く用の野鳥のエサ台も売られているけど、あれもダメなのかな?」
鳥好きの人の中にはそう思った方もいるかもしれません。
先日、野鳥を見られるカフェ『ザ・バードウォッチングカフェ』を紹介しましたが、じつはこのお店の庭にもエサ台が設置してあります。
「えっ、それってダメなんじゃない!?」
矛盾しているようでもやもやする方もいるかもしれませんので、現状でのエサ台の位置づけや給餌によるメリット・デメリットをまとめてみました。
野鳥の餌付けは禁止されている?
ここは気になるところですよね。
現状、野鳥の餌付けは法律で規制されていません。
ただし、自治体によっては餌やりをやめることを呼びかけたり、条例で禁止するところも出てきています。
例えば、北海道では生息数の少ないタンチョウを保護するために餌が少なくなる冬の時期を対象に給餌が行われていますが、
- 鳥獣を人のそばに呼び寄せるため
- 鳥獣を見に来る人を集めるため
といった安易な餌付けをやめるよう呼びかけています。
えー、じゃああのカフェは…(・・;)人を呼ぶためだよね…
ただ、日本野鳥の会では、餌台(バードフィーダー)の使い方についてのガイドラインを掲載しているんです。
日本野鳥の会といえば、野鳥や自然を守る事業をしている団体ですよね。
餌付けはいいの?悪いの?どっちやねん!
餌付けには良い面と悪い面があり、はっきりと答えられないのが現状です。
ここからは餌付けによるメリットとデメリットを考えていきたいと思います。
野鳥の餌付けのメリット
希少な野鳥の保護として

タンチョウは北海道東部を中心に生息するツルの仲間です。
江戸時代まではたくさんいたようですが、明治時代になると乱獲や生息地である湿原の開発などにより激減してしまいました。
一時は絶滅したと思われていましたが、再発見され給餌活動により数が回復してきたのです。
一般家庭の庭で見られる鳥の種類が増えた
イギリスでは、一般家庭の庭で見られる鳥の種類が1970年代に比べて多くなっているという研究があります。
この変化は、鳥の餌や餌台の市場が拡大するとともに起こっているようです。
開発で減少した餌場を給餌により補う
もともと、人が暮らす里山の環境を利用している生物はたくさんいました。
ですが近年の里山の減少にともない、それらの生物の生息地や餌場も減っているといいます。
餌台を置くことが、田畑の減少で減った餌場を補っているという意見もあります。
野鳥を身近に感じることができ、関心を高めることにつながる
普段は遠目にしか見ることのできない野鳥が近くにくることにより、身近な野鳥の多様性や行動に関心をもつことができるという意見もあり、幼児教育や小学校での教育に利用されている事例もあります。
野鳥の餌付けのデメリット
野鳥の健康に悪影響を与える可能性
人間の用意する餌はカロリーが高かったり、油分や添加物が多い可能性もあるため、自然界の餌と違い野鳥の健康に悪影響を与える可能性があります。
カモなどにパンをやる人がいますが、特にパンはカロリーが高いだけで鳥に必要な栄養分が少ないです。
水鳥の幼鳥に与えていると、ビタミンDなどが不足し翼が曲がる症状が出ることもあります。
生態系への影響
生態系への影響として、以下の問題が考えられます。
- 本来その地域に生息していない植物の種子や昆虫を餌付けすることで、外来種として定着してしまう可能性
- 特定の鳥類が増えすぎてしまい、生態系のバランスが崩れる可能性
周囲の環境への影響
また、環境への影響も考えられます。
- 水鳥への給餌による水質悪化
- 鳥が増えすぎることによる糞害、鳴き声
人への害
- 人の食べ物を奪いに来るようになる(カラス、カモメなど)
- 鳥の密度が上がり過ぎることで感染症などが増え、人獣共通感染症に感染するリスク
日本野鳥の会が提示する餌台のルール
日本野鳥の会は、こうしたメリットやデメリットを踏まえて餌台を設置する際のルールを設けています。
清潔にし、管理を十分におこなう
- 餌台の清掃をこまめにすることで、サルモネラ菌などの感染症を防ぐ
- 清掃は手袋を着用し、作業後は手洗いをおこなう
- 空間にゆとりを持って設置することで、野鳥のストレスや喧嘩を防ぐ
- 餌の種類を適切に選び、鮮度の良いものを与える
季節を選んで設置する
野鳥の繁殖期は自然界にある昆虫などを食べるため、春~夏は餌台の設置を控え、設置する場合は自然界の餌が少なくなる冬におこなうことを推奨しています。

野鳥の餌付けについての私見
さて、ここまで野鳥の餌付けのメリットやデメリットを紹介してきましたが、以下は私個人の意見です。
私の考えは、『生態系への影響などもっと研究された上で、節度を守って餌台を設置することは良いのではないか』と思っています。
過度で短絡的、感情的な餌やりは良くないです。例えば、
- 手に餌をのせて手元に野鳥を呼び寄せる→人慣れしすぎる、人への警戒心が薄れる
- 「可愛い鳥」だけに餌をやる→自然界のバランスを崩す可能性がある
鳥が好きな人の中には野鳥まで愛玩動物のように考える人もいるのが事実です。
それぞれの思いがあるのは仕方ないことですが、感情に任せて冷静な目線を失うのは良くないですよね。
できれば科学的な知見にもとづいて、適切な場所・適切な方法でおこなわれるのが良いと思います。
「野生生物に人間は絶対に干渉するべきではない」という考え方の人もいます。
その意見も正しいと思いますが、野生生物との関わりが少ない現代では、生物への関心をもつためにも少しの関わりならしていっても良いのではないかというのが私の意見です。
餌台を置くカフェについては、個人的に好きな場所なので肩入れしてしまっているのも事実ですが…、
野鳥の来るスペースに人が侵入できないようになっているし、身近に観察できる場所を作るという意味では有りなのではと思います。
餌を置かずに、野鳥観察舎のように自然に集まるのが好ましいですけどね。
ただ「可愛い」と見るだけでなく、環境教育的な面がもう少しあればもっといいのにな~と感じています。
カフェの経営者の方がどういう考え方でおられるのかはわからないですが…(^_^;)
そんな感じで、長くなりましたが野鳥の餌やりに関することと私見を書いてみました!
違う意見の方もいらっしゃると思うので、「私はこう思うな~!」ということがありましたらコメントなどいただけると嬉しいです!
それでは。
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