北海道でカマキリを飼育してみる
カマキリはもともと南方系の昆虫で、北海道には生息していないとされてきました。
最近では、道南の室蘭や函館、道央でも札幌での発見例などもあり、北海道にも定着しつつあるようです。
おそらく道外からの荷物に紛れ込むか、人の運んだものが逃げ出したりして侵入してきたのでしょう。
そんなカマキリですが、北海道内では見たことがあるという人はまだあまり多くないようです。
私は昆虫を展示する観光施設で働いているのですが、今年はお客さんにカマキリの生態についても知ってもらえればと思い、飼育を始めました(とりあえずは自宅で実験的に…)。
冬の間は関東地方の実家に戻っていたため、1月頃にオオカマキリとハラビロカマキリの卵鞘を採集。
暖かくなるまで冷蔵庫にて保管していました。
果たして、涼しい北海道でうまく飼育をして成虫まで育てることができるでしょうか。
その様子をここから発信していきたいと思います!
冷蔵庫で保管していた卵鞘
こんな感じで冷蔵庫に
冷蔵庫に虫を入れるというと抵抗を示す人もいますが、昆虫飼育者にとってはよくあること。
本来本州では4月中旬頃からカマキリ類の孵化が始まりますが、北海道では春が遅いので早く孵化してもあげられる餌(アブラムシなど小さな虫)がいません。
暖かくなるのは関東地方と比べて2ヶ月遅れくらいでしょうか…。
そのため、4月中旬までは冷蔵庫に入れておき、長めの冬を疑似体験させることに。
卵鞘をタッパーに入れ、少しだけ湿らせた水苔も一緒に入れて保管していました。
ちなみに卵鞘(らんしょうと読みます。卵のうと呼ぶことも)とは、カマキリの卵本体を守るクッションのようなもので、この中に数十~数百の卵が入っています。

卵鞘の様子
今回は2種のカマキリの卵鞘を採集してありました。関東地方ではもっともよく見かける2種かと思います。
オオカマキリ
オオカマキリの卵鞘×2。

どちらも埼玉県産です。中央のラインが裂けていないので、昨年の秋に産卵された孵化前の卵鞘ということが見分けられます。
採集日は2020年12月24日。あっ、クリスマスイブですね~(^^)イブに一人でカマキリの卵鞘を採集する筆者…w
ハラビロカマキリ
ハラビロカマキリの卵鞘×2。
こちらは、1つが埼玉県産、もう一つが静岡県産です。
埼玉県産は同じく2020年12月24日採集。
静岡県産は2021年2月14日採集。あっ、バレンタインデーですね(^^)バレンタインに一人で(以下略

カマキリの卵鞘は、孵化する前に中身を食べてしまう寄生虫『カマキリタマゴカツオブシムシ』が出てきてしまうこともあるため、今回は計4つ採集しておきました。
カマキリタマゴカツオブシムシって冗談みたいな名前ですが、本当に正式名称なんですよ。
私も初めて聞いた時は絶対ウソだと思いました。
孵化待ちケースをセッティング
初めから大きなケースに入れるのもありですが、ケースの準備がまだできていないため、まずは孵化待ち用のカップをセッティングすることに。
それぞれの卵鞘をこんな感じのクリアカップに入れます。
うまく孵化した数だけ飼育ケースをセッティングしていきたいと思います!

卵鞘を割り箸などにボンドで接着し、床面から浮かせてあげると本来の形に近くなるのですが、無造作に置いておいても孵るときはたくさん孵るので、雑ですがこのままに(^_^;)
中の幼虫が生きていれば、1卵鞘から100~200匹ほどの幼虫が孵化するはず。
この大量の幼虫を管理する際の注意点。

新品のクリアカップなら問題ないのですが…、このカップには空気穴を開けています。
孵化したてのカマキリの幼虫は、意外に小さな空気穴も通れるのでこの穴はセロテープで塞いでおきます。
高温下超過密で何日も放置しない限り、酸欠になったり死んだりすることはほぼないので大丈夫。
埼玉県産のカマキリが北海道で逃げ出したら、国内外来種になってしまいます。それは何としてでも避けなければなりません。
飼育者の責任として、対策はきちんとしていきますよ!!
フタにはメモ用紙をカットして作ったラベルを貼ります。ラベルには、
- 種名(オオカマキリorハラビロカマキリ)
- 採集地
- 卵鞘の採集年月日
- 冷蔵庫から室温に出した日
を記入してあります。

下には広めの余白をとっています。この余白にこの後の成長を書きこんでいく予定。
2021.4.25 冷蔵庫→常温へ
無事に孵化しますように。
まとめ
今回はカマキリの卵鞘を冷蔵庫から出し、孵化待ちカップをセッティングしていきました。
今のところ、カマキリタマゴカツオブシムシは出てきていません。
幼虫の孵化など、また続報を記事にしていきたいと思います!お楽しみに。
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