ゲンゴロウの特徴と生態

昆虫

ゲンゴロウ Cybister chinensis

基本データ

分類コウチュウ目 ゲンゴロウ科
学名Cybister chinensis
分布北海道~九州
国外では朝鮮半島、中国、台湾、ロシア(シベリア)
生息環境平地~山の水生植物が豊富な湖沼、湿地、ため池など
大きさ成虫:34~42mm
幼虫:70~85mm
出現時期通年(冬期は成虫で水中越冬)
食性成虫:魚や甲殻類などの死骸や弱った水生生物
幼虫:魚やオタマジャクシ、昆虫など

日本最大のゲンゴロウ。別名は「ナミゲンゴロウ」や「オオゲンゴロウ」。

成虫の体は流線形で、水の抵抗を受けにくい形をしています。
また、後脚には毛がたくさん生えており、ボートのオールのようにたくさんの水をかくことができる構造です。

ゲンゴロウの成長の様子

ゲンゴロウは抽水植物の茎に穴をあけ、細長い卵を産み込みます。
孵化した幼虫は、ボウフラやアカムシ、オタマジャクシや魚の稚魚など小さな生物を捕食して成長していきます。

飼育下で与えたバッタを食べる様子

幼虫の摂食方法は「体外消化」。キバで獲物を挟み消化液を注入して、溶かしたものを吸って食べるという食べ方です。

飼育下ではバッタなどを与えることも。
食べられた生物は中身は溶かされますが、外側は残ります。

3齢幼虫

幼虫期間の脱皮回数は2回。3齢になると大きさは85mmほどにもなり、同時に食べる獲物のサイズも大きくなります。捕食対象は小魚やカエル、ヤゴなど。

蛹になる時は、一旦上陸して近くの土に潜り、蛹室と呼ばれる丸い部屋を作ってその中で蛹化します

蛹室からのぞく新成虫

飼育下では水苔などを詰めたビンなどに強制上陸させて蛹化させる方法があります。

新成虫

蛹室の中で羽化した成虫は、翅が固まったら脱出し水中に入ります。
温度にもよりますが、孵化から成虫までの期間は約40~50日ほどです。

ゲンゴロウ類の雌雄の見分け方

ゲンゴロウのオスとメスの見分け方は、

  • 前脚に吸盤があるかないか
  • 前翅(背中の部分)にしわがあるかないか

で見分けられます。

前脚を見る方法

メスには吸盤がありませんが、オスには楕円形の吸盤状の器官があります。
交尾の際、オスはこの吸盤を使ってメスの背中にしがみつきます。
ゲンゴロウ類の雌雄を確認したい時はここを観察してみてください。

前翅(背中)を見る方法

ゲンゴロウの背中の部分をよく見ると、メスの翅には細かいシワがたくさんありますが、オスにはなくツルッとしているのがわかります。
メスにのみシワがあるのは、前述したオスの吸盤がくっつきやすくするためだと考えられています。

保全状況

ゲンゴロウの生息する環境

ゲンゴロウは、環境省のレッドリストで『絶滅危惧Ⅱ類(VU)』に指定されています。

日本各地で生息数が減っており、その原因として

  • 開発による湿地やため池の破壊、減少
  • 地方の過疎化や高齢化による農地の放棄→ため池などの管理が行き届かない
  • 侵略的外来種による直接的な捕食、餌の競合、産卵場所の破壊

などが挙げられます。

これは本種だけでなく、その他のゲンゴロウ類や水生昆虫類全体に共通する危機です。
各地で調査や保全活動が行われていますが、ゲンゴロウの生息できる環境は減少している状況にあります。少しでも多くの人が湿地や水辺環境の重要性に目を向けられるようになればと思います。

参考文献

  • ネイチャーガイド日本の水生昆虫(文一総合出版)
  • 日本の昆虫1400②トンボ・コウチュウ・ハチ(文一総合出版)
  • ゲンゴロウ・ガムシ・ミズスマシハンドブック(文一総合出版)
  • 昆虫博士入門(全国農村教育協会)

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