この記事では、北海道在来種のカエル『エゾアカガエル』の特徴と生態について紹介します。
エゾアカガエル Rana pirica
基本データ
分類 | カエル目(無尾目) アカガエル科 |
学名 | Rana pirica |
分布 | 北海道、サハリン |
生息環境 | 平地から山地の湿地や森林 |
大きさ | 46mm~72mm |
出現時期 | 4~10月頃 |
寿命 | 約5年 |

北海道の在来のカエルは、本種とニホンアマガエルの2種類。どちらも北海道全域で普通に見られます。
エゾアカガエルは本州のヤマアカガエルと近縁で姿もよく似ていますが、エゾのほうが全体的にずんぐりしていて鼻先も短い印象です。
ちなみに、学名の『pirica(ピリカ)』とは、アイヌ語が由来で「美しい」「かわいい」などの意味があるそうです。響きも可愛らしいですね。
生息地域と生息環境
エゾアカガエルは周辺の島を含めた北海道全域に分布しています。国外ではサハリンにも。
生息環境も幅広く、平地から山地の森林や湿地、草地などに生息しています。
繁殖期には池などの水辺に集まって大きな声で鳴く様子が見られます。
繁殖の様子
エゾアカガエルの繁殖がおこなわれるのは雪どけの時期。平地では4~5月頃、山地など気温の低い場所では7月頃になることもあります。
この写真のように、池や沼にたくさんのエゾアカガエルが集まってきます。

両頬がぷっくりとふくらんでいるカエルがいるのがわかるでしょうか。これが雄で、『鳴嚢(めいのう)』という器官を膨らませて鳴いているところです。
このように集団で団子状態になって産卵するタイプのカエルなら、すぐに雌に出会えるので求愛の鳴き声は必要ないように思われますが、エゾアカガエルもしっかりと鳴いています。
その理由は、集団の中で同種の雄であることを知らせているためだと考えられています。
エゾアカガエルを含めたほぼ全てのカエルは体外受精で、雄はできるだけ自分の遺伝子を持つ子孫を残そうと雌にしがみつき、雌が卵を産んだ瞬間に一番近くで放精をしようとします。
動画で見るとなかなかの迫力です!
鳴き声も高く「キャワンキャワン」と鳥のように鳴きます。
カエルの周りに浮かんでいるのが卵。
産卵数は1000個ほどで、産みたてはしぼんでいますが周りの寒天質が水を含むとふくらみ、タピオカのようなぷるぷるの状態になります。
幼生の成長
生まれたての幼生(オタマジャクシ)は10mm前後。
雑食性で、腐った植物や生き物の死骸などを食べて45mmほどまで成長します。
約2ヶ月ほど経つと手足が生えて変態・上陸をしますが、高山など寒冷な場所では幼生のまま越冬する個体もいると考えられています。
上陸後2~5年かけて成熟し、おとなになったら繁殖に加わります。
エゾアカガエルの天敵
エゾアカガエルは小さな昆虫などを食べる捕食者でもありながら、自身もさまざまな動物や鳥に狙われる被食者でもあります。
- 成体の天敵…哺乳類、鳥、ヘビなど
- 幼生の天敵…エゾサンショウウオの幼生、ザリガニなど
エゾアカガエルとエゾサンショウウオは同じ水辺に産卵する場合もあり、エゾアカガエルの幼生はエゾサンショウウオの幼生に狙われることもあります。
この2種の関係について、面白い研究があります。
エゾサンショウウオの幼生がいない池で育ったエゾアカガエルの幼生は通常の形態で成長しますが、
エゾサンショウウオの幼生がいる池で育ったエゾアカガエルの幼生は、頭の少し後ろの皮下にゼラチン状の物質を満たし、体を膨らませます。また、尾ひれの丈も高くなります。
エゾサンショウウオに丸飲みにされるのを防ぐような形に、エゾアカガエルの形態が変わっていたのです。
周りの状況に合わせての形態の変化は、じつはエゾサンショウウオにも起こります。
その内容はこちらの記事に書きましたので、ぜひ併せてご覧ください。
北海道の数少ない在来両生類のひとつ、エゾアカガエル。
繁殖期は特に観察するチャンスがあります。春先には水辺へでかけて、カエル観察をしてみるのはいかがでしょうか。
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